最近、クライミング教材用の動画づくりに凝っている。できたものは「資料と教材」のページに置いてある。トップメニューからもたどれる。
心肺蘇生のスタンダードになっているアメリカ心臓協会の2020年ガイドラインには「自主学習やビデオを利用した学習は…インストラクターが指導する訓練と同様に効果的であることが、研究により明らかにされている」とある。以前には、指導者が実践して見せるより動画の方が理解しやすい―という趣旨の記述もあった。それは登山・クライミング技術でも同じだと言えるだろう。
動画撮影は簡単ではない。道具の用意やロケーションの設定など思いのほか準備に手間がかかる。しかも、思い描いたイメージ通りの映像が一発で撮れることは、まずない。その場では「うまくいった」と思っても、見返すと粗が目立ち、納得いかないことがほとんどだ。ちょっとした修正でも、すべてやり直さなければならないことも、ままある。まあ、撮影とはそういうものだということはわかってるんだけどね。
それでも、終了点の処理シリーズはほぼ完成した。これも、岩場で撮ったものと自宅の仮設「スタジオ」で撮ったものと両方つくってみた。スタジオは出かけなくて済むけどリアリティーに欠ける。本物の支点を使う岩場は操作がしやすくリアリティーがある一方でカメラの設置場所が限定され、思い通りの映像になりづらい。一長一短がある。


どちらがわかりやすいのか。いずれも思い入れがあるので自分では判断がつかない。そこで山岳会の仲間に見比べてもらったら「スタジオの方がわかりやすい」という意見が多かった。確かに、背景が白のスタジオに対して、岩場は地味な色のロープが周囲に溶け込み見えづらい。ロケ撮影ではロープやウエアの色も考慮する必要があった。
まあ、撮り直しが容易なスタジオの方が修正はしやすい。撮影のために部屋の模様替えをしたり、背景布とそれ用のスタンドを購入したりしている。それが報われたと思えばうれしい。

アップした動画は全部で6本。「終了点の処理」シリーズ3本と「バックアップ」シリーズ3本だ。順に内容を解説する。
終了点の処理シリーズは、連結されていない終了点(ハンガーリング)でのロワーダウンと懸垂下降、連結した終了点(ラッペルステーション)の懸垂下降。ビレイループ周辺の様子がわかりやすいように、なるべくクライマー視点に近い位置から撮った「上から目線」動画にしてみた。
ただ、それでもバックアップの手順がわかりにくいので、別にバックアップシリーズも作ってみた。懸垂でバックアップを取らない人も多いが、BMC(英国登山評議会)の動画では「少しの手間でとても安全性が高まる。やらない選択肢はない」と言っている。10年以上バックアップを取っている自分も同じ意見だ。UIAAのハンドブックでも推奨していて、標準的な技術として定着している。
問題は「やるか、やらないか」ではなく、「どのようにやるか」だ。バックアップはスリングの種類と長さ、スリングの固定方法や固定場所など、さまざまな方法がある。すべてに精通しなくてもよいけど、一つだけは確実にできるようにしておくべきだ。
動画では3種類のスリングと3通りの方法でバックアップを取っている。どれも、まあまあスムーズにできているように見えるが、事前にそれぞれ数回以上試して微調整している。動画のように簡単にはいかない。肝心なのはいろいろ試して練習を積み、その上で判断し、選択することだ。
ちなみに自分は細めのアラミドスリングを使ったペツル方式にしている。テープスリングは食いつきがよく、緩みやすいので下降時は快適だ。しかし、ロープに絡みつくので外すときにうっとおしい。その点、アラミドはサラッと外れる。
ペツル方式はバックアップを取る時間が短いのがよい。最近知ったBMC方式は脚が引き上げられる違和感があるけれど、ビレイループ周りがごちゃごちゃしない利点がある。これも捨てがたいと思っている。






