ひすいか否かを判断する重要な基準に比重がある。鉱物には特有の比重があり「ひすい輝石」は3.3だ。海岸や川で採れる物は純粋なひすい輝石ではなく、他の鉱物が混じっている「ひすい輝石岩」で、平均的な比重は約3.2といわれている。3以上あればセーフだが、それ以下だとちょっと怪しくなる。
産地にはだいぶ通ったので持った感じである程度はわかるようになった。ただ、手のひらに収まらない大きな石や豆のように小さな石だと感覚が狂う。特に川は石が大きく、同定を誤ると漬物石を持ち帰ることになりかねない…というか何度かやった。そこで現地で比重を測れば愚かな失敗が減るし、ひすいの特徴も絞れると考えた。
小ぶりの石の比重は、水を張った器をはかりに乗せて測る。石をひもでつり、完全に沈めた重さ(a)と水中に浮かした重さ(b)を調べる。bは石が押しのけた水の重さ=体積を測っているので、「比重=a/b」で求められる。部屋の中なら簡単にできる。

しかし、水平な場所でないと正確な数値が出ない。ベニヤ板に水準器を乗せて水平を出して測るも、はかりや水の重さで板がたわみ、なかなか測定値が安定しなかった。適当なところで値を読んで比重を計算したのだが、自宅で測り直してもそんなに大きくは外れていなかった。ある程度の目安にはなった。
ただし、石が大きすぎると器に収まらない。大きな石が多い川ではこの方法が使えない場合もある。そこでつり下げ式のデジタルはかりを試してみた。石をつるして重さを測り(A)、水の中でもつるして測る(B)。Bは石が押しのけた水の重さ=体積だけ軽くなるから、石の体積はA-Bとなる。したがって「比重=A/(A-B)」で計算できる。理屈は簡単だけどフィールドで計算するのはめんどくさい。


つり下げ式のはかりは最小計測単位が10グラムと大雑把なのが難点。でも、大きな石なら十分信頼できる。両手で抱えるほどのそれっぽい石は、7.73キログラムもあった。つるして測るだけでも大変だ。流れがあっても、水中でもピタッと数値が出た。比重は3.17。洗ったら淡緑色ですべすべしている。極めてひすいに近いと思われた。

さすがに持ち帰るわけにはいかない大きさなので、その質感をじっくりと観察した。それに似た感じの石を探したところ、いくつかそれらしい石を確保できた。比重は3.13〜3.36だった。ようやく、川ひすいの尻尾をつかんだ感じがした。
ロディン岩も比重は同じくらいあるので、比重だけで判別できるわけではない。質感や硬度も重要だ。それでも的はかなり絞れる。できる限り比重を正確に知ることができれば、効率よく探せる。
「あなたは計器を信じますか? それとも自分の感覚を信じますか?」と聞かれたとき、即座に「計器です」と答えられれば、ひすいハンターとして一人前だといえよう(個人的な見解です)。
「ひすい」「ひすい輝石」「ひすい輝石岩」「翡翠」
当ブログで「ひすい」と表記している石は「ひすい輝石岩」のこと。鉱物として純粋な「ひすい輝石」は真っ白だが、鉄やクロム、チタンなどが混じることでさまざまな色になる。濃い緑色の部分は主にオンファス輝石。曹長石やブドウ石が混じっていることもある。それでも、大部分がひすい輝石なら、ひすい輝石岩に入る。
「翡翠」は宝石としてのひすい輝石岩の呼び方。そのような石は静岡では採れないので、そうした表記を使うことはないだろう。